平成元年創業の弊社は、令和元年に創業30周年を迎え新たな歩みを始めました。時代の流れと共に文化財を取り巻く環境も新しい時代を迎えております。文化財保存修理の根源は、大切なものを残そうとする人々の「心の文化」です。「文化財を後世に守り伝える一助となる」をモットーに、時代を超えた人々の心の架け橋となるべく、一つ一つのご縁を大切に、私たち文化財保存修理技術者は研鑽の日々を過ごしております。

個々の作品に残された様々な情報やその痕跡を見過ごすことのないよう、綿密な調査・記録の整備を徹底し、最良の処置を行うため常に誠実な気持ちで作業することを志しております。伝統技術の継承を基本とし、日々進化する科学技術の応用など、将来的な経年変化等についても十分に検討しながら、更なる技術向上のため幅広い視野で職務に臨むことを意識しております。

文化財を未来に繋ぐためには、今できる最善を尽し、将来の修理も安全にできる技術を磨くこと、また未来に向け弛まない人材育成にも努めております。特に技術者に対しては「自主性」、「向上心」、「探究心」を重んじ、常に前向きな気持ちで取り組める人材を求め、相互に高めあえる関係作りを目指しております。「公の宝」を継承する非常に重要な責務を担っている一員として、広く社会に貢献できる人材となるよう教育にも尽力しております。自然に囲まれた立地環境を活かし、肌で感じる四季の移ろいから、自然の「色」や「美」をもとに感性を育み、文化的創造性の向上も併せて高めていけることを理想と考えております。

そして、文化財修理に不可欠な伝統的材料である紙、裂、膠、保存箱など、また刷毛、筆といった道具類の製作技術も、我々の手仕事には不可欠です。文化財を伝える一翼を担う大切な材料を提供して下さる諸材料各方面と連携しながら、日々修理に取り組んでおります。

約100平方メートルの床面積を持つ装潢作業場と、書籍室、歴史資料室、染色・紙漉き・漉嵌室を完備し、工房理想の修理環境作りにも力を入れております。