株式会社岡墨光堂は、明治27年（1894）京都市中京区の地に創業いたしました。創業当初は、京都画壇や東京画壇の新作絵画の表装を主たる生業とし、終戦後は国指定文化財の修理を本格的に手がけるようになりました。以来、数多くの国宝や重要文化財の修理に携わってまいりました。昭和55年（1980）からは、京都国立博物館内に設立された文化財保存修理所の一室にて国宝や重要文化財をはじめとした貴重な装潢文化財の修理を継続しており、中京区の本社では未指定文化財などの修理や新作の表装をおこなっております。

伝統産業を担う表具師から、いわゆる装潢師へと、装潢文化財の修理に携わる専門家の意識は、この半世紀で大きく変化をしてまいりました。文化財を取り巻く社会環境が変わりつつある現代において、文化財の保護や活用のために貢献できる専門家の育成と、より安全で精度の高い技術の開発を常に念頭に置き、活動をしております。創業以来の「開明と進取」の気質から生み出された「乾式肌上げ法」、「DIIPS」に加えて、近年には欠損部の形状を正確にトレースして補填材料を整形する新技術（特許第5865538号「書画の補修部材および補修方法」）も開発できました。

安全で質の高い装潢修理の実務には、現在、約30名の技師が取り組み、技術を磨いております。さらには日本国内外の文化財修理に関する研究会などにも積極的に参加、発表をおこない、日本の文化財修理において継承すべき美意識や修理原則論を再認識しつつ、新たな価値観も吸収しながら、装潢文化財の修理に貢献してまいります。