理事長よりご挨拶
Message
文化財を守り伝えるために
一般社団法人 国宝修理装潢師連盟(以下、国装連)は、絵画、書跡・典籍、歴史資料といった美術工芸品を中心とした文化財の保存修理を専門に行う技術者の集団です。昭和34年に国指定文化財を修理していた7工房の代表者が参集し、装潢修理技術の向上を図るためのさまざまな事業を行うことを目的として設立しました。平成7年に装潢修理技術が国の選定保存技術に選定され、国装連はその保存団体に認定されています。
基本理念は、過去から受け継がれてきた文化財を、人から人へと受け継ぐ橋渡しをすることです。伝統的な技術の習得はもちろん、文化財修理についての理論および美術や歴史などの教養を身に付け、さらに科学的な材料や技術を理解し、装潢文化財の保存修理を行っています。
また、文化財修理には良質な原材料や用具が不可欠であり、修理技術とともに維持・継承されなければなりません。現在、原材料や用具を取り巻く環境は、存続の危機に直面しています。国装連は原材料や用具の生産者の方々とも連携し、後継者の育成に努めています。
文化財は、わが国の文化の根幹を構成する国民的財産であり、私たちはこれを保存して後世に伝えていく重大な責務があります。国装連及び加盟工房10社は、文化財修理を通じた社会貢献に努めてまいります。
今後とも国装連の事業に一層のご支援とご指導を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
一般社団法人 国宝修理装潢師連盟
理事長 山 本 記 子
国宝修理装潢師連盟の設立
国宝修理装潢師連盟の主な工房は、古社寺保存法(明治30年施行)、国宝保存法(昭和4年施行)時代より指定文化財等の修理を行っており、昭和25年の文化財保護法施行以後は、国庫補助事業としての国指定文化財の保存修理に携わってきました。
昭和34年3月、当時指定文化財を修復していた7工房(東京1、京都5、大阪1)の代表者が参集し、装潢技術の向上をはかると共にそれらに付帯する事業を行うことを目的として「国宝修理装潢師連盟」が設立されました。各工房はおのおの独立した組織であり、従来はそれぞれが独自の対応と工夫をこらし修理を行っていましたが、国装連の設立により工房間の連絡が密になり、伝統的な装潢技術と新しい修理理念のもと、加盟工房相互の装潢技術の研鑚に努めるようになりました。
平成7年、国の選定保存技術に「装潢修理技術」が選定され、国装連はその保存団体として認定されました。このことにより国装連は、文化財修理技術の更なる研鑽と後継者育成策を講ずる社会的責務を負うこととなりました。以後、国際シンポジウムや定期研修会等の開催、修理技術者資格制度の導入などを通じてその期待に応えるとともに、平成17年には法人化を行い、より充実した活動の展開を目指しております。
令和3年現在,加盟工房は東京2、京都4、滋賀1、奈良1、静岡1、福岡1の10社であり、所属する登録技術者は130人に及んでいます。また国装連設立以来、加盟各工房が修理施工を実施した国指定文化財(絵画,書跡・典籍,古文書,歴史資料,染織工芸品等)の件数は、平成17年の法人化以降、およそ1000件以上に及んでいます。
国宝修理装潢師連盟の事業目的
国宝修理装潢師連盟は、装潢文化財の修理技術の向上並びに、これらに付帯する知識の交換、会員相互及び国内外の諸団体との連携協力等を行うことにより、文化財の修理と保存に寄与することを目的としています。
- 所属する会員法人の修理技術者への、修理技術者資格の付与
- 研究発表会、技術講習会、講演会、見学会等の開催
- 文化財に関する国内外の関係機関との交流及び協力
- 装潢修理技術、修理材料の開発、改良、研究の奨励
- 修理材料関係における、文化財選定保存技術保持者育成のための協力
- 修理資材の共同購入、共同備品の整備
- 装潢修理技術に関する後継者の育成
- 修理事業の請負、修理技術者の派遣、修理に関する資材の販売
- その他目的を達成するために必要な事業
シンボルマークについて
全体の色と雰囲気は日本国旗の「日の丸」からモチーフを選び、「国宝」のイメージを昇華させました。色は赤を少しくすませ「伝統」を強調し、上に重なるピンセットが「緻密な作業」と「現代」を表現しています。また、海外の方にも認識しやすいように The Association for Conservation of National Treasures の文字列と頭文字「ACNT」を並記しました。
〔平成17年4月1日制定〕
法人の概要
Outline
名 称 | 一般社団法人 国宝修理装潢師連盟 |
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英文名称 | The Association for Conservation of National Treasures(a General Incorporated Association) |
設立年月日 | 昭和34(1959)年3月1日 |
法人年月日 | 平成17(2005)年4月1日 |
会員法人数 | 10法人 |
登録技術者総数 | 130名 |
(令和6年6月1日現在)
国宝修理装潢師連盟の沿革
昭和34年(1959)
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当時国指定文化財を修復していた7工房(東京1,京都5,大阪1)の代表者が参集し,装潢修理技術の向上を図ると共に,それらに付帯する事業を行うことを目的として,国宝修理装潢師連盟を設立
昭和35年(1960)
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文化財保護委員会(現在、文化庁)より団体表彰(文化財保護法施行10周年)を受ける
昭和42年(1967)
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ユネスコ,国際博物館会議(ICOM)共催「東洋美術保存修復専門家研修」に協力
H.J.Plenderleith "The Conservation of Antiquities and Works of Art -Treatment, Repair, and Restoration-"(1956) 翻訳事業 昭和47年(1972)
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文化庁,東京国立文化財研究所,国宝修理装潢師連盟の三者と日本原子力研究所高崎研究所との共同により,絹本文化財補修用電子線劣化絹の開発を開始
昭和52年(1977)
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「表具用手漉和紙(美栖紙)製作」「表具用古代裂(金襴等)製作」が選定保存技術に選定される
昭和53年(1978)
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全国文化財保存技術連合会に加入
「表具用手漉和紙(宇陀紙)製作」が選定保存技術に選定される 昭和54年(1979)
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「本藍染」が選定保存技術に選定される
昭和55年(1980)
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「美術工芸品保存桐箱製作」が選定保存技術に選定される
昭和56年(1981)
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文化庁の依頼により文化財建造物修理用資材供給等実態調査を行う(〜昭和58年)
昭和62年(1987)
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「唐紙製作」が選定保存技術に選定される
昭和63年(1988)
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IIC(国際文化財保存学会)京都大会が開催される
平成2年(1990)
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文化庁,東京国立文化財研究所,芸術研究振興財団による「在外日本古美術品保存・修復事業」への協力を開始
平成6年(1994)
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「表具用手漉和紙(補修紙)製作」が選定保存技術に選定される
平成7年(1995)
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「装潢修理技術」が選定保存技術に選定され,国装連が保存団体に認定される
国際交流基金より奨励賞を受ける
国際シンポジウム「日本美術品の保存修復と装潢技術」を奈良市にて開催(翌年より定期研修会を毎年開催) 平成10年(1998)
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「表具用打刷毛製作」が選定保存技術に選定される
平成12年(2000)
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文部大臣より団体表彰(文化財保護法50周年記念)を受ける
平成15年(2003)
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事務局を京都市中京区御池通高倉西入に開設(5月)
登録技術者制度,修理技術者資格制度の運用を開始 平成16年(2004)
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第10回定期研修会記念国際シンポジウム「東洋文化財修復技術の現状と未来」を京都市にて開催
「表具用刷毛製作」が選定保存技術に選定される 平成17年(2005)
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法人化により「有限責任中間法人 国宝修理装潢師連盟」を設立
事務局を京都市中京区東洞院通御池下るに移転し、法人業務を開始
Webサイト開設
九州国立博物館文化財保存修復施設開設に伴い、九州支部を設置
東京文化財研究所、ICCROMによる「紙の国際研修」への協力を開始 平成18年(2006)
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イギリス・大英博物館において技術支援事業を開始
「第1回東アジア紙文化財保存修理シンポジウム」を北京にて開催
修理技術者インターンシップ事業を開始
連盟功労賞創設 平成19年(2007)
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関西支部を設置
賛助会員制度の運用を開始
九州国立博物館と共催で「第2回東アジア紙文化財保存修理シンポジウム」を太宰府にて開催 平成20年(2008)
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「第3回東アジア紙文化財保存修理シンポジウム」をソウルにて開催
東アジアの紙文化財保存に関する日中韓共同プロジェクトを開始
「国宝修理装潢師連盟修理技術者標準報酬・退職金制度」運用開始
中間法人法廃止に伴い一般社団法人に移行(12月1日) 平成21年(2009)
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「一般社団法人 国宝修理装潢師連盟」に名称変更(4月1日)
関東支部を設置
第3回「文化財保存・修復 読売あをによし賞」特別賞を受賞
設立50周年 平成22年(2010)
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「第4回東アジア紙文化財保存修理シンポジウム」を蘭州にて開催
「一般社団法人 伝統技術伝承者協会」設立 平成23年(2011)
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設立50周年記念事業『装潢史』刊行
平成24年(2012)
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九州国立博物館と共催で「第5回東アジア紙文化財保存修理シンポジウム」を太宰府にて開催
平成26年(2014)
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各支部に代わり、修復事業部を設置
JICAエジプト国別研修「保存修復としての和紙研修」を実施 平成27年(2015)
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『装潢文化財の保存修理 東洋絵画・書跡の現在』発行
平成28年(2016)
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「日本の表装」展 京都大学総合博物館ワークショップ開催
平成29年(2017)
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「金銀糸・平箔製造」が選定保存技術に選定される
平成30年(2018)
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文化庁創立50周年記念表彰を受ける
「時代裂用綜絖製作」が選定保存技術に選定される
「装潢修理・材料用具製作」が選定保存技術に選定され、一般社団法人伝統技術伝承者協会が保存団体に認定される「金銀糸・平箔製造」が選定保存技術に選定される 令和元年(2019)
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「ポーランド・クラクフにおける文化財保存技術発信・交流事業」にて発表
ICOM京都大会にて発表 令和2年(2020)
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ユネスコ無形文化遺産「伝統建築工匠の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」登録
組織
連盟員
代表理事(理事長) | 山 本 記 子 | 代表理事(理事長) |
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副理事長 | 半 田 昌 規 | 副理事長 |
専務理事 | 宇 都 宮 正 紀 | 専務理事 |
連盟員 | 橋 本 浩 | |
吉 岡 宏 | ||
山 口 聰 太 郎 | ||
池 田 和 彦 | ||
大 菅 直 | ||
岡 岩 太 郎 | ||
坂 田 さ と こ | ||
藤 井 良 昭 |
(令和6年6月1日現在)
外部理事
湯 山 賢 一 |
(令和6年6月1日現在)
名誉会長、名誉会員
名誉会員 | 坂 田 雅 之 | 名誉会長 |
---|---|---|
名誉会員 | 田 畔 徳 一 | 名誉会員 |
名誉会員 | 内 藤 勇 | 名誉会員 |
名誉会員 | 鈴 木 裕 | 名誉会員 |
名誉会員 | 前 橋 潤 一 | 名誉会員 |
(令和6年6月1日現在)
賛助会員
有限会社 六法美術 | |
特定非営利活動法人 文化財保存支援機構 | https://www.jcpnpo.org/ |
韓国粧潢研究会 | |
株式会社 文化財保存活用研究所 | https://www.rekishiwoikasu.com/ |
Samsung Foundation of Culture (サムスン文化財団) |
https://www.samsungculture.org/(サムスン文化財団) https://www.leeumhoam.org/(リウム美術館) |
(令和6年6月1日現在)
アクセス
Access
〒604-8187 京都市中京区東洞院通御池下る笹屋町445 日宝烏丸ビル2F1.2号
交通アクセス
- 京都市営地下鉄「烏丸御池駅」〔烏丸線K08・東西線T13〕下車
- 北改札口(有人改札口)を出て出入口3-1または3-2より徒歩2分
(JR・近鉄京都駅より烏丸御池駅まで地下鉄烏丸線で3駅5分)