修理技術者資格制度

修理技術者資格制度

国宝修理装潢師連盟は当連盟内のみならず世界中の装潢文化財修理技術者を対象に平成15(2003)年度より「修理技術者資格制度」を導入、実施しております。

優れた技術と倫理のみならず文化財修理に携わるにふさわしい人格を備え、規定の講習を受講した者が参加できる一方で、資質に欠ける者はその資格を失うような制度になっています。修理技術者の技量を客観的に評価し、技師補、技師、主任技師、技師長の4段階の資格を付与します。

主任技師には最前線にて修理する技術者として必要な知識や思考、倫理、説明力などを、技師長にはそれらはもちろんのこと、修理全体を監督するとともに、技術者を指導する能力などについても問われます。試験は、保存科学、美術史学、歴史学等、文化財修理に密接に関係した分野の学識経験者により構成される「修理技術者資格制度委員会」(外部委員会)が連盟の委嘱を受けて実施しています。

安全な修理が行える技術者かどうかを見極める一つの指針として、国宝修理装潢師連盟では、この修理技術者資格制度は重要なものと考えています。国装連ではこの資格制度に基づき各種講習の開催を行うなど、技術者の育成に努めております。

装潢師のキャリアアップ

資格種別について

令和3年4月より修理技術者資格制度総則が改定されました。

登録技術者資格認定の基準

技師長

(試験資格)
  • 1.主任技師資格を取得後、6年以上の実務経験を有し、連盟の各分類の上級講習会を受講して、かつ、技師長試験に合格した者。
  • 2.文化財修理に対し哲学を持ち、倫理を理解している者。
  • 3.主任技師としての能力の上に、文化財の所有者、修理監督者への文化財の概要、損傷の詳細な状況、修理の全容、対処の技術、材料などの詳細な内容等を相手が理解できるように説明できるコミュニケーション能力を有し、更には、後進の技術者へ自身の持つ知識、技術等を指導し、伝える能力を有する者。
主任技師

(試験資格)
  • 1.技師資格を取得後、6年以上の実務経験を有し、文化庁の修理技術者講習会、および、連盟の各分類の中級講習会を受講して、かつ、主任技師試験に合格した者。
  • 2.文化財修理に対し哲学を持ち、倫理を理解している者。
  • 3.文化財に関する学術的情報を収集・学習し、作品の表現及び構成材料を理解できる能力を有する者。作品の損傷状況を判断する能力を有する者。
  • 4.修理のための技術や使用材料についての基礎的知識を有し、正確な作業を実施できる能力のある技術者であること。
  • 5.文化財の所有者、修理監督者、工房経営者及び技師長等とのコミュニケーション能力を有する者。
技師 技師補のうち、4年以上の実務経験を有し(但し、大学院修士課程以上を修了した者は、技師補の実務経験は2年以上とする)、かつ、連盟の初級講習会を受講し、実技認定された者。
技師補 連盟の新任者研修会を受講し、かつ修理技術者資格制度登録審査に合格した者。

資格試験の種類

書跡I類 書跡に対して本紙修理の技術と知識の全般を有する者。
・主に、次の形態(装丁)の文化財の修理の技術と知識を有する者。
裂地と紙を用いた掛軸装、巻子装、冊子装など。
書跡II類 ・主に、次の形態(装丁)の文化財の修理の技術と知識を有する者。
装飾的な形態(装丁)を伴わない古文書及び歴史資料群(冊子装、巻子装、額などを含む)。
・主に、抄紙機を使用した「漉嵌」等による修理の技術と知識を有する者。
絵画I類 絵画に対して本紙修理の技術と知識の全般を有する者。
・主に、次の形態(装丁)の文化財の修理の技術と知識を有する者。
裂地と紙を用いた掛軸装、巻子装、屏風装、襖貼付など。
絵画II類 ・主に、次の形態の文化財の修理の技術と知識を有する者。
壁画や板絵などの様々な基底材に描かれたもの。
・主に、補彩、絵具層剥落止めなどの彩色層の修理の技術と知識を有する者。

【ご参考】旧分類の資格種別
「書跡」=書跡・典籍、古文書の修理全般
「絵画甲」=主に絹、紙に描かれた絵画の修理全般
「絵画乙」=主に絹、紙以外の素材に描かれた絵画の修理全般

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